田螺(たにし)

 なるべく化学肥料をやらずに、除草剤をまかずに、水辺のような環境で生き物溢れる稲作つくりをしようと 2年前に ドロオイムシの農薬投与をやめた。肥料も一発剤の施肥料を30キロ から 28キロ 25キロと減らしてきている。
 除草剤は一発剤(投げ込み式)を10アールあたり10個となっているのを去年は8個、今年は5個まで減らした。
 水田の中は藻が繁茂し のぞけば 奇妙な形の 小さな水生生物 水生昆虫 メダカ? 藻を食べる田螺 どびじゃっこ(おたまじゃくし)がうごめいている。毎日それを見るのを楽しみにしていたのです。
 沢山の種類の小さな生物達の活発に動き回る姿や 藻の上を滑らかに歩く?田螺の住む世界は じっと見ているとファーブルが楽しんだ世界そのもののような気がするのです。ところが、この方法に一つの大きな制約があったのです。
 仲間田という制約です。一枚の40アールくらいの他の半分は私の田圃ではないのです。その相手と共同で水の管理を行う以上、農法を大きく異なる方法にするわけにはいきません。協調しなくてはならないのです。[猫]
 この地方では苗が根をしっかり下ろした頃に、他の水を落とします(水を抜きます)。乾燥させて硬くします。酸素を地中に呼び込むことと根をしっかり張らせること稲刈りでもコンバインが沈み込んだりしないようにする事が目的です。
 そのため、相手からそれを言われたら反論は出来ません。私は同意し、水を落としました。
 するとどうでしょう、それからとてもいい天気[晴れ]が続き、あちこちにあった水溜りが数日で大方干からびました。
 干からびた田圃の畦を歩く私はあちらにもこちらにもたくさんの どびじゃっこ や 藻 や 小魚の死骸の小山を目にすることになりました。大量殺戮の加担者の一人になりました。
 それから数日、再び水を入れた田圃の土は深緑から おうど色になりました。
 私は落胆しましたが3日目くらいからまた藻の繁殖が目で確認できました。生態系が蘇生してきました。さらに今朝見れば田螺がうごめいていました。ツバメ達は周囲の田んぼより命の多い我が家の田圃に多く飛んでいるように思えました。
  現代の農法は 田圃を コメ生産工場のように管理します。そこに生態系が存在しているとは考えません。それが農薬(殺菌剤、殺虫剤、除草剤等)、化学肥料の多用と 大量高効率生産のための機械利用とその大型化によって実現されています。これからは更に進めて徹底したコスト管理が重要になっていくことでしょう。
 世界で勝ち抜く農業となるために
 古い人間である私はそれがどうも肌に合いません。田圃の生き物と共存し、生命の循環の中にコメの生育があるような、そんな百姓のやり方を楽しみたいのです。
 秋には田圃の土の中に 黒光りする 田螺のいる 田圃を作ろうと思うのです。