二本杉

遠く山の上にある二本杉
目の良かった 子供の頃
あれはどんな大きな木なのだろう と 思っていた
父ちゃんは 二本杉と呼んでいた
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大人になって 山へ行くと
道案内の看板に  二本の杉 と ある
近づけば 大きいには違いないが
驚くほどの巨木でもなく
ちょうど 二つの山の 谷 の 分かれ目に立つゆえに
我が家からそう見えたのだと知る。
50年たち 私は 今も 二本の杉を  見るとはなしに見る
杉も私も 50年  おんなじ ところで  暮らしてきた
 雨の日も  風の日も 晴れの日も 雪の日も 婆ちゃんとの別れの日も
父ちゃんとの別れの日も 妻と所帯を持った日も 子らが生まれた日も
息子が結婚した日も  ずっと
そこに見えていた
私が この世を去るときも
お前達は並んでそこにいることだろう
そのときは 心で別れの言葉を言おう
 「サイナラ ずっと お前達のことは 好きであった。」
ああ まて
その前に  もう一度  お前達に 会いに行くことにするとしよう