おぼっちゃま

中学の同級生シバタ君は お医者さんだ。
 何代か続く医者の家系で 父親もその親も産科のお医者さんだったが彼は眼科になった。

 彼と初めて会ったのは48年前だ。中学校の同じ組。

 当時、山や田圃の中にあるいくつかの小学校と町の小学校を卒業したら町にある同じ中学校へ行く。
 育ちが違うので村部の子か町部の子か身なりですぐ分かった。
 町部の子は大方が オシャレ。中学校で初めて丸刈りにしたことがイガグリ頭で通した私たちにはすぐ分かった。

 そんな町の子の中でもシバタ君はなんとなくジョーヒンであった。

 色白で
 ひときわ黒い髪
 ちょっとぽっちゃりしていて
 長い睫に大きな瞳[目]
 やさしい共通語らしい言葉使い
 声はやさしげで高く合唱団向き
 性格は穏やかで
 人に悪意を持ちそうにない
 勉強もまあまあ
 運動はちょっと苦手


 そんな彼と同じ組になったのは一年生のときだけであったが
 目が合えば自然と笑みが出てしまう温かみがあった。

 おぼっちゃまだ!

 ダガ、嫌な感じがしなかった。真綿のようなふんわり感があったからかもしれない。
 
 特に目立つわけでもなく、優しさゆえに苛められるわけでもなく、みんなに好かれていた様に思う。

 
 今も彼は眼科医としてふんわり感で患者に接していることだろう。

 けさ目が覚めたとき ふと彼のことを思い出したのでこれを書いた。
 あの ふんわり とした存在を思い出し 私は ふんわりとした気持ちになれたからだ。