早月を行く その3 満天の星

[ここは標高1400?]
鉄を喰う杉と別れて暫くすると早月の長く厳しい登りが始まる。
登りの始まって少しのところに大杉があって、その根に腰を下ろし休んでいる人がいる。
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帽子には○○marathonとかいてある。下山中だと言う。
私も登山開始から1時間、ここで休憩する事にした。ペットボトル1本あっという間に飲み干してしまった。暑い。
所々で写真を撮ろうと首からデジカメをぶら下げていたが、それが顎か顔から落ちた汗でベチョベチョになっている。
余り気にしてなかったのだが、後での故障の要因だったのだと思う。
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「頑張って!」
そう言ってマラソン帽子の人は軽快な足取りで下っていった。

さて、ここから正念場である。木の根、階段、岩場、梯子、ロープ、様々な急斜面が延々と入れ替わり立ち代わり現れてくる。尾根道なので水は手にはいらない。息づかいは荒く、汗が目に入る。
何人かの人が追い越していった。みんな速い。
1200mの道標を見てから行けども行けども1400mに着かない。どこかで見落としたかと思ったが、そんことはなかったように思う。又上って又登る。それでもない。見落としたんだなと思った。なら1600mの道標がソロソロあるだろう。
登り、登りして道標発見、1400m。 間違いなく「1400m 環境省」とかいてある。
これにはガッカリした。オカシイナ?

  時計を見ても1600m近くでなくてはならない様な気がしていた。其のアタリで前方を進む女性がいる。少し小柄だ。両膝はズボンの上にサポーターがしてある。年齢は私位か。
 その人は「お先にどうぞ。」と言い道を譲ってくれた。登り続けるうちに彼女の鈴の音は聞こえなくなった。

 1400mから1600m到着は早かった。(  1400mの道標はあの位置でいいのかな。・・・・ そういう気がした。)
 1800mあたり、ようやく左に赤谷山が見える地点に着いた。この辺りではヒタスラ登る。水を飲む、また登る。
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 [異変とマッチ箱]
 急登で
ほせてひからび
こわばる身には 
ぬるい水とて
うまいの一語

 
ふと凍らせたアクエリアスを持ってきていたことを思い出した。
 リュックを開け取り出せば、溶けて冷たく飲み頃だ。一気に二本飲んだ。しかし、これがまずかった。
 元々腸が悪いのだ。
 30分位たって腹の調子が少しオカシイ、それからというもの「早く着かねば。」の思いだけ。こういう時にはクソ力がでる。キツくなる登りも何のその。森を抜け、灌木地帯、もうすぐと思った。
だが!突然に、鎖場。後から来た人に「どうぞ。」と言う顔は歪んでいたかも知れない。
鎖場は思いよりは短かった。そこを過ぎ再び急坂、そしてマッチ箱がみえた!
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  眼下の早月小屋へ急ぎ用を済ませた。
嗚呼 幸せ@! 
6時間半の今日の工程が終わった安堵もあった。

 [明日てんきに]
部屋は余裕があった。10人。布団は3組余っていた。
 シャツとズボンの乾燥のため外へでてすわる。
小屋のオヤジさんがビイルをのみながら客に語っている。元、富山県警山岳救助隊なので山の事は良く知っている。それにしてもよく喋り、よく飲む人だった。
一時間位ボーとしていると、先ほどの彼女が到着した。安堵の顔があった。

夕方、靄が消え、劔岳の頂上が見えた。はるか天空遠くちょっとだけ見えた。
モチロン、オヤジさんの満足そうな解説はアルコールも手伝って発散した。
「あれがマッチ箱といい、・・・ 大日のあの雪渓は鳳凰が羽ばたく形、云々・・・。」

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部屋の通路を私と反対側に寝ている人の屁がすごい。私が眠りかければブッ、一晩に十数発。ああああ、やめてくれ。眠れない。
 ただそのおかげで深夜、
 窓から夜空の星がよく見えた。
満天の星
宇宙の果てない深さだった。